この本を手に取ったのは、装丁が素晴らしいのと
妻が森となったというあらすじにちょっとした好奇心を感じたからでした。
森があふれる
作家である埜渡徹也には年若い妻がいます。
ある日妻の琉生が草木の種を大量に食べ、全身から芽吹いてしまう。
「妻がはつがしたんだ」
その一言はとても不気味で、序盤はホラー小説なのかな?と思わせるくらいです。
埜渡に関わる色々な人物の視点で紡がれる物語も、読み進めていくとどうしても登場する男性陣が好きになれなかったです(-"-)
多分、どこにでもいるタイプの人たちだけれど・・・わたしからするとイライラする。
男性に限らずなのだろうとは思いますが、相手の立場に立ってモノを見ることを一切しない。
この物語では登場人物たちの夫婦のズレも描かれています。
このズレって難しいのはズレの大きさの感じ方は必ずしも一緒ではないということ。
埜渡が自分の妻との生活を赤裸々に小説化したのも、読み始めた当初はそれだけ奥さんを愛しているのだろうなと勝手に思い込んでいました。
好きで好きで仕方ない気持ちを言葉にしたと。
でも普通は自分の性生活を題材にされて受け入れられる人はいないでしょうね。
わたしなら絶対に嫌です(ー_ー)!!
編集者の白崎の気づきでわたし自身もハッとなり、埜渡ってすごく自分だけしか見てない勝手な人間に見えてきてどんどん嫌いになっていきます。(単純ですね)
終盤の方は、埜渡に対しての嫌悪感が強くなってしまいました。
たださらさらと流れるような文章なので、「嫌いだ、こいつ」と思いつつあっという間に読了してしまいました。
カテゴリーを何にしようかと悩みましたが、男女の尊厳・・・特に女性の尊厳が物語の根底にあるので「恋愛」に入れてみました。
白崎の同僚の茄子野の放った言葉が印象的でした。
埜渡の男性本位な部分を如実に表している一言で、おそらくこの2人は相性悪そうだなと感じました。
白崎夫婦にしても、夫の言動が「現状を変えたいのに行動力が伴わずに文句だけ言っている」のか「単に愚痴ってスッキリしたい」のかによって2人の行く末は全然違うのです。
後者なら聞き役に徹すれば良いわけで、前者の場合は夫に見切りをつけるか行動に移せるように助力しない限り問題は解決しないんです。
それが出来ないなら相手に不満やちょっとしたモヤモヤを抱えたまま、ずーっと過ごさないといけない。
全体的にファンタジー要素があるせいで、ドロドロはせずふんわりとした雰囲気でよむことができましたがいろいろと考えさせられる1冊でした。