今回ご紹介する本は、夫に離婚を言い渡されて呆然とする母
そんな母と一緒にケーキ屋を作り上げていく頑張り屋の娘のサクセスストーリー。
ある日、他に結婚したい人がいるから離婚して欲しいと告げられた母・茜さん。
呆然自失状態だったのですが、法律事務所で事務をしている娘七さんが奮闘!
そのおかげで財離婚調停は大勝利して離婚が成立しました。
離婚の反動でしばらく何もできなかった茜さんですが、得意のパウンドケーキを焼いてご近所に配り始めました。
行きつけの喫茶店のご夫婦の厚意で、パウンドケーキを喫茶店で販売することになりました。
そこから茜さんと七さんのサクセスストーリーが始まります。
この本の見どころ
◎とにかく成功しまくるストーリー展開
トントン拍子てこういうことかな。
ちょっと好き嫌いが分かれてしまうくらい極端な内容。
特にトラブルらしきものはなく(トラブルになる前に回避しちゃうので)
あっという間に販路を広げて、店舗展開して通販まで手掛けていきます。
そういった意味ではハラハラがないので安心して読めます。
クレーマーとかにイラッとなるシーンがないのは良かったなという感じ。
◎母茜さんと娘七さんの好感度が高い
茜さん、穏やかで性格がとっても良いんです。
癒し系のお母さんと、頑張り屋の娘。
相性バッチリです。
従業員の話もきちんと聞いてくれるので
茜さんのお店のスタッフはすごく働きやすいと思います。
娘の七さんも相手への気配りができるし、素直で一生懸命です。
父方の祖母が彼女の良さに気づかずに冷遇していたのは残念すぎますね。
◎巻末についているケーキのレシピが美味しい!
お店で販売しているバナナケーキとダークフルーツケーキの2種のレシピ
実際にバナナケーキを作ってみました。
ちなみに使用したレモンは国産です。
本書には「レモン」としか記載がありませんが、皮を使用するので輸入レモンは使わない方がよいでしょう。
日本で許可されていない農薬や防カビ・防腐剤などが使われている場合があるので。
バナナケーキのレシピってすごく多いです。
わたし自身も今まで大量に作ってきました。
たくさん作ってきたバナナケーキの中でも
これは美味しい(^^♪
バナナを潰さずに使うので、食感が残ってよりバナナ感が出ます。
他のレシピよりバナナの使用量も多め。
レモンの酸味が爽やかで後味が良いです。
断面もスライスされたバナナが散ってきれいです。
うん、これは売れるよね。
表面にココナッツファインのせても良いかもしれない。
また作りたいレシピでした(^▽^)
さてさて
主人公親子への好感度も高いし、レシピのケーキも美味しいし
本作への満足度は高かったのか・・・と言われれば
すごーく低いです。
本の感想は、読み手の感じ方や思考力、経験などで全く変わってきます。
自分がこうだから相手も同じように思うはず・・・という概念はありません。
というのを前提に、以下はわたし個人の感想です。
☆ネタバレも含みますので、ご注意ください☆
東京という競合の多い地域
マーケティングもしたことがない人が事業立ち上げているのに
何かを学んだりするシーンが出てこない。
店舗を持って、従業員まで雇っているのに開店準備が書かれていない。
店内の改装打ち合わせが少々とガスオーブンの調整する内容だけ。
なのに順風満帆に成功していく。
終盤はサクセスストーリーも食傷気味になりました。
わたし自身は成功しまくる話って嫌いじゃないんですよ。
ストレス溜まらないし。
ではこの消化不良って何か?
「リアルと虚構のバランスが悪くて共感できない」
リアルを追いすぎる必要はありません。
でも日常を描く小説ならば、リアルから離れすぎても薄っぺらに見えてしまいます。
では、どこら辺がリアルじゃないかと言うと
★食品衛生法をガン無視している
焼き菓子を販売するにあたっては、営業許可や資格を取らなくてはなりません。
自宅でお菓子を焼く場合、専用のキッチンが必要です。
店舗販売まえに自宅開業しているわけで、その準備等がほぼ書かれていません。
★追加で購入したものがオーブントースター
販売用のパウンドケーキをトースターで作れるのか・・・?
2001年当時のトースターで。
オーブンレンジと間違えてる?
これは誤植なのかなぁ*1
そのほかになくてもいいよね?っていうやつ
父親の病院の不祥事
読んだ時に即座に思い出したのは、実際にあった医療事故。
当時、テレビでもさかんに報じられていましたし、犠牲者の多さに慄然としたのを覚えています。
元ネタと断言できるくらい酷似している。
これが元ネタでなく、完全創造だとしても
あんな重篤な事件なのに、内容が薄いというか雑すぎる。
全ての責任を放棄して自殺という逃げの選択をした父親に
「楽になったね」って言葉をかけるんですよ。
完全に他人事。
もともと関係性が希薄だったせいでしょうか。
でも18人も犠牲になっているんですよ。
遺族との賠償などの問題も解決していない段階でしょう?
状況を考えたら、そんな言葉でますかね。
そもそもね、そういう辛い状況で首吊り自殺しているのに
穏やかな死に顔ってならないですよ。
親戚に同じように亡くなってる人がいたので、わかるんですけど。
ちなみその事件を追った本を執筆した健人(のちに結婚)が賞を受賞しています。
正直、ここら辺の話はなくても良かった。
それよりもっと深堀するべきエピソードたくさんあるでしょーって感じです。
ひたすら主人公に都合の良い内容になり過ぎていて、それがてんこ盛り。
なので無理やり感も出てくる。
二人にプロポーズされるとか・・・
モテすぎに見えないように事前に失恋エピソード入れたのかなと勘ぐってしまう。
おばさんになってくると、経験値フィルターがたくさんかかってくるし
見方が意地悪になるのでしょうかねぇ(-_-;)
20代のわたしだったら、違和感なく楽しく読めるのかもしれないなぁ
*1:+_+