本を読むと、主人公に共感したり応援したりすることが多いです。
登場人物が魅力的だと、やはり読んでいても楽しいし、面白いです。
キャラが好きでシリーズを読破したいと思ってしまうこともあります。
今回は、まったく逆と言いますか・・・・初めての経験をしました。
そういった意味では良い出会いをしたのではないかなぁと思います。
西洋洋菓子店プティ・フール
この物語の舞台は、パティシエである亜樹が働く、祖父の洋菓子店。
祖父のお店は昔ながらの商店街にあるケーキ屋さんです。
それを取り巻く人々の連作短編集です。
非常に読みやすく、登場人物も魅力的です。
出てくるお菓子もとっても美味しそうで「シュークリーム食べたい」と
つい思ってしまうくらい。
サクサクシューも好きですが、毎日食べたいのはクリームたっぷりで生地が
しっとりした昔ながらのシュークリーム。
作中で言えば、亜樹のではなくおじいちゃんの方。
洋菓子を作る工程も、甘い香りが漂ってきそうでお腹すきます・・・(´;ω;`)
自分の商品が定番化しないという焦りもあり、いろいろとやらかしてしまう亜樹。
商品が売れずに材料がたっぷり残ってしまったりします。
これに関しては、元同僚の澄孝も責任があると思うんですよね。
彼は、見た目やイメージが先行してしまい本質を見ていない残念さが
あります。若さゆえなのですが。
気に入られたい気持ちも半分、勉強半分で色々なお店のスイーツを買ってきては
亜樹と試食しています。
参考として、勉強するならいいです。刺激を受けるのは大事ですよね。
でも真似しちゃうんですよ。
お店の雰囲気も無視しちゃっているのもどうかと思うし。
うーん・・・って感じです。
むしろサービス(接客そのもの)を真似した方が絶対いいのに。
そしてわたし的に最大のやらかしをしてしまう亜樹。
高熱で仕事を休んで寝ている恋人に試作品のガトーショコラを
食べさせるような女はいかがなものか?
この場合、職人気質とかは全く関係ありません。
人としてどうか、です。
気持ち悪いかもしれないし、喉が荒れているかもしれない。
お腹を壊しているかもしれない。
ガトーショコラって濃厚なんですよ。
病気の時に食べたい人って稀です。
そういった事を全て無視し、自分の試作品で頭が一杯の亜樹は
前に食べれなかったのは、こういう作り方してないからなどと
的外れなことを言い出す。
ああ、この子は最低だなぁ・・・って思ってしまいましたね(=_=)
真面目なのも、職人気質も良いと思います。一生懸命、プライドを持って
仕事に向き合うのも素晴らしいです。
ただ、サービス業である以上、食べてもらう人、自分の目の前にいる人を
無視してしまうと、ただの自己満足になってしまうんです。
サービス業でなくても提供する形であれば同じですね。
その後、祖父から諭されたり自分で少し気づくこともあり・・・
作中、数回しか登場しないおばあちゃんが意外なキーパーソンでして。
心の底から「グッジョブ!!」となります。
少し良い方向に向かうかな、成長していけそうかな・・・というところで
物語は終わります。
最後の方で留飲はさがりましたが、亜樹の印象が悪いまま終わるという
主人公が好きじゃないなんて、初めての経験をしました。
亜樹のことが好きではなくても、続編が出たら必ず読んでしまうだろうなと
思います。それくらい、ストーリーは面白かったです。
人が成長していく過程や前に進んでいくのを、自然に表現しているのも
良かったです。
シュークリームをお供にどうぞ★