絶海の孤島で起こる連続殺人 ありがちな舞台なのに引き込まれてしまった小説

 自分がミステリー好きになった原点と言えば

アガサ・クリスティーです。

最初に読み始めたのは王道の「シャーロックホームズ」

確かに今でも大好きです。

でものめり込んで読んだのはクリスティーなんです。

代表作「そして誰もいなくなった」は今でもドラマ化されたりして

原作を読んでいない方もタイトルだけは耳にされているのでは

ないでしょうか。

 

そして誰もいなくなったはその名の通り、孤立された空間で

ひとり、またひとりと亡くなっていくサスペンスミステリーです。

こういった舞台を描いているミステリーはたくさんあります。

その中のひとつ、近藤史恵さんが第四回鮎川哲也賞を受賞した

デビュー作品。

 

凍える島

凍える島

凍える島

 

 

別荘付きの孤島に主人公含め、男女8人が7日間のバカンスにやってきます。

移動手段はボート一艘。電話もありません。

メンバーは喫茶店を営む主人公、その従業員と恋人、常連客、その恋人と友人、そして

主人公の不倫相手とその妻。

楽しく過ごすはずの休暇が一変、凄惨な連続殺人が起こってしまいます。

 

主人公が既婚の男性と付き合って、しかもその妻と一緒にバカンスって

最初から不穏な空気がぷんぷんですね!

さらにその別荘はある宗教団体が集団自殺を行ったといういわく付き。

中盤では荷物も全て失い、サバイバル状態。

ここまでくると舞台装置は万全な感じがしちゃいますが

物語は主人公の1人称で語られていて、女性目線ということもあるし、主人公

の性格なのか、比較的のんびりとした雰囲気で進んでいきます。

 

主人公が探偵役をしていないせいか、探偵役となるキャラとの距離感も

あるせいでいかにも推理してます!感がないんですよね。

なのでこちらがいろいろと考えながら読み進めていける楽しさがありました。

探偵役と仲良くないシチュエーションも面白いです。

謎解きの要素もしっかりとあるので、後半部分には犯人の検討もつくと

思います。

 

ホラー系ならば、メンバー以外の第三者説はアリですが、ここまでお膳立て

されていてメンバー外が犯人でした・・・という展開は面白味にかけてしまう

気もします。

そこは作者の腕の見せ所なのでしょうね。

ネタバレになるので、犯人がメンバーか第三者かは内緒(*´ω`*)

 

ただ、犯人が明かされた時は「( ,,`・ω・´)ンンン?」でした。

逆にヒモの結び目がギュッと締まったような感覚になってモヤモヤ・・・

最後の最後でその結び目がほどけていくのですが、もう寂寥感しかなく

それでもこの感覚は嫌いじゃなかったです。

大きくはないけれど、軽いどんでん返し。

人を殺す動機がそれでは巻き込まれた人たちは、とんでもなく不幸だな

と思いました。

 

実はこちらの作品は30年近く前に書かれています。

読んでいても違和感もなく読めてしまうのはすごいと思いました。

読み進めていくと、主人公と一緒に鬱屈したような感情が流れ込んできて

ちょっと疲れてしまう時もありました。

それだけ自然に感情が流れ込んでくるようで、読んでよかったなというのが

実感でしょうか。

 

近藤史恵さんはこの「凍える島」がデビュー作なのですが、わたし自身は

最初に読んだのは別の作品です。

それを読んで一気にファンになり、この作品にも出会いました。

その本はまた今度ご紹介します。