時代小説は大好きで良く読みますが
徳川幕府になってからのものばかりで
戦国時代の小説はこれが初めて手に取る本です。
宇喜多の捨て嫁
宇喜多と言えば、一番に頭に浮かぶのが「宇喜多秀家」
大河ドラマでもちょくちょく出てこられますね。
わたしもそんなに歴史は詳しくないので
ゲームに出てくるモブキャラくらいの認識で・・・
歴史好きの方、すみません(=_=)
今回は秀家のお父さん、宇喜多直家を中心とした物語です。
梟雄と言えば誰?というランキングでトップテン入りは必須で
スキルは「暗殺」と即答できちゃう人です。
ちなみに梟雄(きょうゆう)とは、残忍で強く荒々しいことだそうです。
娘、本人、娘婿、主君、寝返ってきた部下
それぞれの目線で語られています。
誰が主観になるのかで、宇喜多直家という人物像を
さまざまな角度でとらえることが出来ます。
この時代は本当に生きることが厳しいです。
身分の格差もありますが、同じ武士同士でも格が違うと
扱いが全く変わりますし
前日まで安寧に暮らしていても、ちょっとしたことで(例えば
裏切って蹴落とされたり)簡単に命がなくなります。
当然、それは家族にも波及していくわけです。
家臣の裏切りの抑止力とするために、家族が人質になってしまうんです。
万が一、裏切り行為があった場合は人質たちは凄惨な最期が
待っているのです。この時代に生まれなくて良かった!!って思います。
この本の宇喜多直家はタイトルのまんまで、自分の娘たちを使い
その嫁ぎ先を次々と滅ぼしていきます。
直家の娘たちは、捨て駒ならぬ「捨て嫁」と呼ばれる始末です。
娘からすれば、せっかく嫁いで一緒になった旦那様がはめられて
殺されてしまうのですから、父親への憎さ爆発ですよね。
しかも直家は奥さん(富)のお父さんまで暗殺してしまい、それが
原因で奥さんは自害してしまうのです。
ここまで書くと「直家って冷血人間」って感じてしまうのですが
直家目線の物語を読んでしまうと、謀略の手際が素晴らしいです。
なるべく兵を出さずに始末してしまえば、被害は最小限なのですから。
むしろわたしの目には、主君の浦上宗景の方がかなりヤバい奴(;゚Д゚)に
映りました。狂気じみてます。
浦上宗景の視線の先にあるのは「自分」
一方、宇喜多直家が見ているものは「宇喜多家や家臣、民たち」
結果として一番身近な人たちを次々に失ってしまうのは皮肉ですね。
直家が今わの際に遺した、最後の謀も恐ろしいと思いつつもよくもそこまで
と感心してしまいました。
宇喜多側からの視点だけで語られていないので、同じ時代がかかれていても
飽きずに読み進めることができます。
実際、一気読みしてしまいました。
この本でのわたしの宇喜多直家という人の印象は、冷徹だけれど
舅の教えに忠実な愛妻家でした。